Rice Field Activities
不耕起水稲栽培研修事業
不耕起水稲栽培研修活動の目的
本事業の「不耕起水稲栽培研修活動」においては、水稲農の多様な伝統技術、技能にふれる「実学の場所」を提供いたします。
地元農家所有農地の利用権提供を受けて行います(横浜市都筑区大熊町、緑区小山町水田)
この農業地域環境を次世代に渡せるように「保全、維持する」ことをめざします。
自給について
この研修は、「1反(10㌃)は一人で水稲耕作可能な面積」という稲作経験知をもとに組み立てたものです。1反の広さの水田で生産されるコメの量は、大人一人が一年食べて食べきれない量に当たり、自給自足可能なコメ量を生産できる水田圃場面積が1反だということを、この年次研修で体験的に学びます。
もちろん、この都筑区、緑区など横浜市に残る水田環境は、先人から継承され、農家のみならず、地域の人たちによって守られる地域生活インフラです。また、研修圃場がある水田地帯には、1反だけで存在する水田はほとんど見ることはできません。
単年次研修では、研修終了後に1反の水稲を一人で栽培耕作する方法を紹介します。
わくわくヴィレッジ不耕起水稲栽培研修活動は現代有機農業の草分けである金子美登(かねこよしのり)氏(埼玉県小川町)故人の支援があって開始されました。氏は「これからは身近にある資源を生かして、永続循環する農的世界の幕が開く」として「食とエネルギーを自給して、自立する農業(有機自給農)」を提唱しています。この提唱に沿い「自分の食べ物は自分でつくる」実体験によって、生業(生きるわざ)としての農体得の一歩を踏み出して戴きたいと思います。
不耕起栽培法について
当農園は、日本の水田のほとんどが農薬と化学肥料と大型農業機械とを投入して行っている「慣行農法」を排除するものではありません。
しかし、研修では現代有機農法のひとつ「不耕起水稲栽培法」をとりいれます。「不耕起水稲栽培法」は岩澤信夫(いわさわのぶお)氏(1932~2012)が1983年頃から実験研究開発、1985年に提唱普及した栽培法で、多くのの有機農家が現在採用しいます。
氏は「農家におコメは作れない」「おコメを作っているのはイネ」と説き、イネの植物としての強靭さをいかに引き出すか、イネを栽培する水田はどのようであるべきかをテーマにして研究を重ねられました。耕さない水田でイネの野性を引き出し、環境変動に対して安定的に生産を保障する「わざ」として提唱されたのが「不耕起水稲栽培法」です。
この農法を研修で採用することにより、農薬や化学肥料、大型農業機械によらず、もっぱらイネの強靭さ、環境適応力によってコメを生産することができることを体験します。生産量は慣行農法の半量ないしそれ以下を想定してください。
しかし、農薬や化学肥料使用知識がなくても、機械操作技術を持たない農業未経験者でも、コメを生産することができること。他方、数年後には、残留農薬や、残留化学肥料が自然除去され、多様な有機生物が甦っている伝来の水田を確認することができます。先人から継承されてきた水田の、一方での地力回復と、自身の体と脳への「農の力」継承と、二つを一つとする研修方法です。
代掻きを徹底し「手除草」作業が行いやすい「尺角植え」(株間を一尺の正方形とする)「一本植え」を採用し、手除草と水管理の徹底による栽培を行います。
年間耕作計画
2月 ①畔補修、畔付け
寒中、雑草の動かない時期に田周り中心に耕耘。
のち水入れ田植え時期まで畔を頑丈、高めに整える。
3月①草刈り
水張りまで雑草刈りを数回行う
3月②浸種
種もみを10度以下水に10日程度漬ける。
4月①催芽
風呂残り湯等を利用して2日程度温め発芽を促す
4月②播種
育苗箱に床土を入れ潅水。発芽籾を70g蒔く
5月①水張り
田んぼに水を張って浅沼状態を保持していく
5月②代掻き
深さを平均化し、雑草を抑える(かき回す)
5月➂田植え
手植え、一本、尺角植え
5月④水管理
最初は水を抜いた状態。活着したところで水入れ。
徐々に深水に
5月⑤1番草
雑草発芽成長にダメージを与え成長妨害(2、3番草とも手取り、ブラシ等で摺込む)。
6月①2、3番草
株根回りの競争雑草を取り除き成長を押さえる。
6月②水管理(深水へ)
雑草がもぐり稲が高くなるように水位調整。
7月①畔草刈り
畔を刈込み、虫の発生抑制をはかる。
7月②水管理(深水続行)
雑草がもぐり、イネが日照妨害するように水位調整
8月①畔草刈り
畔を刈込み虫の発生抑制をはかる。
8月②水管理(深水続行)
雑草がもぐり、イネが日照妨害するように水位調整
9月①畔草刈り
畔を刈込み虫の発生抑制をはかる。
9月②水管理(落水)
稲刈り10日前から乾田状態にする。必要に応じヒエ抜き
10月①稲刈り
手刈り、手結束。必要に応じバインダー刈り
10月②ハサ架け
ハセを使って天日干し1~2週間架け干し
10月③脱穀
脱穀機による。シートで天日干しし、保管へ。
11月①籾摺り、精米
機械を使用して、必要分を随時行う
11月②田づくり
清掃、最終草刈り。片付け、機械メンテ、道具整備
12月①田づくり
適宜火燃し。藁、もみ殻等を田に戻す。
1月①田づくり
藁を切り刻み、田全体にばら撒く
研修活動の要領
「年間耕作計画」を基準に、研修生自身が任意の日に、家業や勤務に支障ない範囲で、自身で活動日を決めて圃場等で作業を行う。「観察(野回り)」はできるだけ多いことがぞましい
「わくわくヴィレッジ」社員のサポートを得て「研修参加者で、一反(約10a)」を一年間、耕作する。
作業衣、水田用履物、雨具、軍手等防護類、並びに、鎌、鍬、スコップほか道具類は、自分に合ったものを自前で用意する。
*機械、備品類は保管場所等にあるヴィレッジのもの等を使用。各人用意する私物を保管場所等に保管は可能。
研修予定日はLINEグループ等でNPO社員(清水・浦野)が連絡する。
野回り観察、作業の記録についてはLINEグループ、SNS等で共有するようにする。
必要な現金負担(保険金をふくむ)は各人とし、金銭授受はNPO法人わくわくヴィレッジ、個人とも基本的に行わない。
*圃場ごと収穫されたコメは研修参加者と相談の上決するものとする。